着物豆知識集

玉川屋 トークショー「織りもの」のお話 5

織り方のお話をしばらくしてきたところで、
今度は柄の出し方、「絣(かすり)」のお話をしようと思います。

絣というのは、柄の出し方の技法になりますが、ちょっと難しく表現すると、
図案を糸に写して、糸を染めて模様を表現する、といった技法になります。

絣の柄出しにも、
十字や亀甲などの細かい絣柄で大きな柄を織り出す「小絣」と
柄全体をベタの絣で織り出す「総絣」とがあります。

亀甲や十絣の「小絣」。
ベタの絣で柄を織る「総絣」。

今までお話ししてきた、塩沢紬を例に取ると
着物にしたい柄を草稿と呼ばれる図案におこし
図案の模様を、こういった方眼紙様の上に糸一本ずつに対応して写してとってゆきます。

塩沢紬の図案です。

図案の柄を繰り返すことで、着尺全体に柄を織りますので
この図案は上端と下端の柄ががきちっと合うように作られ
これを繰り返し糸に染めてゆき全体の柄を作ります。

ここに、この方眼紙にこういった、伸び縮みしにくい和紙で作ったテープを当て
ちょうど柄のくる部分に印を付けてゆきます。

図案の柄の位置を緯糸一本ごとに
和紙のテープに写し取ります。
(写真は、実際の緯糸の位置と テープの位置とは合っていません。)

方眼紙には、糸一本ずつに対応して番号が振ってありますので
順番に一段ずつ実際に糸に柄として染める部分をテープに写して取ってやります。

それを、今度は糸に当てて、何反分かまとめた糸に写してやります。
このときには、青ばなという、紫露草から取った染料で、
後になって蒸しという生地に蒸気をあてる工程で自然と色が消えてしまう染料を使います。
そして、写したところに今度は櫛のようなヘラを使い本当の染料を刷り込んでやります。

図案→テープ→糸 と
絣の位置を写してゆきます。

おわると、まとまっていた糸を一反分づつに巻き取ります。
こうして柄をつけた糸が出来ると、
図案の順番に経糸(たていと)を並べ、緯糸(よこいと)を図案どおりに合わせて織ってゆくと
経糸と緯糸の絣が重なって、柄が織り上がってくるんです。

この、絣で柄を出すことは織物に共通ながら
絣の糸づくりは織物によって様々で、
大島紬には締機(しめばた)、結城紬にはくくり、白鷹お召しには板締めなど
織物によっても色々な方法があります。

例えば、シボのある塩沢と似た風合いの白鷹お召しは
板締めと言って、洗濯板のように溝を彫った板を何枚か用意しておいて
この板に糸を巻き、板の溝の山と山・谷と谷を合わせながら板で挟み
全体を万力でギューッと締め付けてやって、上から染料をかけてやります。

そうすると、溝の山同士に挟まれた糸の部分には染料がつかず
溝の谷と谷の間を染料が通り、そこの部分の糸を染めてゆきます。

そんな風に糸を板に巻き付けてゆきますので
板の厚み分だけは、糸の染まらない部分が出てきますので
織り上がると生地の耳の部分がこんな風に出てくるんです。

この板締めに使う板は、
反ったり歪んだりすると絣が綺麗に染まりません為
堅い木を、きちっと彫らなければならないため
残念ながら、やはりその職人さんも減ってきています。

白鷹お召しは昔から柄の雰囲気があまり変わりませんが
その板を新しく彫って作ってゆくのが大変なため
一度彫られた板を大事に使ってゆくからなんです。

私共の塩沢紬も、
そんな風に板締めで染めたこともあったのですが
もう板が使えなくなってしまい現在では染めてはおりません。

絣糸を染めるときも、こんな風な技法を使って染めると
絣の足、と呼びますが色の染まっている部分と染まっていない部分の境が
若干、微妙に滲むんです。
それが何となく柔らかい雰囲気となって着たときのお着物姿に出てきます。

実際お召しになるときには、
こういった細かい技法的な事よりも、
まずお顔映りやご自分の雰囲気似合うお品かどうかが一番大事です。
その上で、先々大事にお召しになるお品のことを
よくご存じならば、お召しの時にも一層の楽しさがますのではないでしょうか。

前回の「麻」のお話に続き、
玉川屋さんで皆さんとお話しするのは今回で2度目となりますが
お着物の大好きな皆さんと、
お話を出来るまたの機会を私も楽しみにしております。

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